その時、突然フェニックス様はこちらに 近づいてきて、なぜか匂いを嗅ぎ始めた。
――クンカクンカ。
「んー、なんじゃ? ……良い匂いがするの う」
「え?」
今度は俺が右手に持っていたパンの袋 を、彼女は見てこう言った。
「あ、そ、その黄色くて、まんまるい物 は……それに、網目がついておるのか……」
どうやら彼女は、このパンに興味がある ようだ。かなり興味津々である。 とりあえず、俺は袋からそれを一つ取り 出してみる。
「……」
すると、彼女は自身の仮面を取り外し た。
(……か、可愛い)
最初に俺が思ったのはこれである。 なんというべきか、美少女、その一言に 尽きる。俺の語彙力がなくなるほどに可愛 らしい彼女は、芸能界スカウトされてもお かしくはないほどだろう。
「あーん……」
そのとき、急に彼女は小さな口を開け た。
「何してるんですか?」
「な、何してるんだって……わ、我にもはよ 食べさせんか! ほ、ほーら」
物欲しそうにこちらを上目遣いで向いて くる。なんてこった、こんな可愛い子が上 目遣いとか反則だろう。