「はい、とれましたよ」
「お前は優しいの」
ついにカラスまで鳴き始める。完全に夕暮れを知らせるように、寂しく、悲しく、哀しく。 橙色に染まる空が、徐々に暗くなっていくばかりである。
「あぁ、日が暮れてきたのう」
彼女は空を見上げ、黄昏るようにそう呟いた。
「ほんとですねぇ……そろそろ帰るか」
「え!? もう……帰るの?」
帰ろうと思った矢先に、彼女から残念そうな顔でこちらを窺ってきた。
「暗くなる前に帰らないと……」
がしりと彼女は俺の腕を掴んでくる。意地でも俺を帰らせたくないのか、彼女の力は小さくも強かった。
「いやじゃ……我はずっとここでひとりぼっち……ずっと、我のことを見つけてくれる人間を待っておったのじゃ……」
「そうなんですか……」
「ゴミを捨てたり、落書きをしたり……そんな人間は嫌いじゃ。……でも、お前は……そ
の……好き……なのじゃ」
「ん、んん!?」
聞き慣れない単語を耳にした俺は、変に驚いてしまう。