ハッと気付いた。
彼女はただ、日々感じていた素朴な疑問をぶつけただけだ。
目が悪くもないのに、伊達の眼鏡を掛けてるのは何故だろうと。

別に伊達眼鏡を掛けること自体は珍しくない。
真面目そうに見えるからとか、単にオシャレの意味で掛けている人はたくさんいる。
だが、私はその両者に当てはまらない。
ならばなぜだろうと、一抹の疑問を抱くのは普通のことだ。
別に不思議なことでも何でもない。
「ああ、うん、別に……気にしないで」

自分が何か地雷でも踏んだだろうかと恐々としている瑞紀ちゃんをなだめ、
私はシックなアンティークものの椅子に深く腰掛けた。
私は、私が何故伊達眼鏡を掛けるに至ったかの経緯を思い出し――、
そして、今は亡き友のことを想い、遠い空を見やった。