結局父の助言もよく理解できないまま[ありがとう]とだけ軽く返し、独り立ちしてから2年帰っていなかった実家を後にした。
帰りの電車の中でいくら考えたところで言葉通りの意味にしか捉えられず、そうだとして何を
最寄り駅を出ると、雨雲が空を包み、今にも降り出しそうな天気だった。
閑静な建物達の間を通り、帰路につく。薄暗い空気が、心から光をさらに遠ざける。
もう何もわからない。いっそこのまま何もしない方がいいのだろうか。
中途半端な時間のせいで街灯も灯らない道を通りながらそんな事を考えていると、道の真ん中でうずくまっている女性がいた。
髪は短く、どちらかというと小柄な体格の女性だ。
周りが見えないほど心は閉ざされていたはずが、彼女の姿だけは鮮明に見えた。
他人の心配をしている場合じゃないほど、自分の心は乱れていると自分でも分かっている。でもどういうわけか、僕は彼女の横を素通りできなかった。