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隊長と死なない新参兵 #33 |
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ココアナ |
10/4 23:53 |
「よかった…助けられた…!」
俺をギュッと優しく抱きしめる。
その人は今まで会った大人たちとは違った。
暖かかった。
俺は安心して目を閉じた。
まるで母の腕の中にいるようだ。
「怪我はないかの?」
改めて顔を会わせ、ニッコリと優しく微笑みながら言った。
何だが聞いたことのない言葉遣いをする人だ。
「怪我は、出来ないから…」
俺の体にはさっきまでナイフを刺されていたとはまるで思えないぐらい、傷ひとつさえ無かった。
「怪我が出来んのか?」
「出来ないってか、死ねない」
俺は正直に自分のことを言った。
男の人は酷く驚いた顔をした後、まるで自分のことのように悲しい顔をした。
「すまん、遅かったみたいじゃな、俺がもう少し速く来れれば…」
俺の頭を優しく撫でたその手は、微かに震えている気がした。
「うんん、助けに来てくれて嬉しい。俺、このままどうなるのか凄く怖くて…」
じん、と目の奥が熱くなった。
気づくと、ボロボロと大粒の涙を流していた。