パツ、ポツポツポツポツ…
黄色い小さな傘に弾かれた滴(しずく)が奏でる心地のよいリズム。灰色に覆われた景色の中で鮮やかに映える紫陽花(あじさい)の傍、ランドセル背負った小柄な影。濡れないようにしっかりと柄を握りしめ、幼い脚が行く濡れたアスファルト。
ぴょこぴょこり、跳ねるカエルが先を行く。ときたまこちらを振り返り、急かすようにして喉を鳴らした。
「ねぇ、まって」
どれほど歩いたのだろうか。見慣れぬ景色の中、鉛のように重い足が地面を叩く。その度に広がる透明な波紋。
小さな雨粒はやがて、前も見えなくなるほどの土砂降りになった。重たい臭いは溜息をいくらついても纏(まと)ったままで離れない。一歩ごとに靴裏からしみこむ水が生ぬるく感じる。
「待ってって、お願いだから!」