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荊の姫(11)-邂逅の木漏れ日- |
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ごはんごパン |
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開いた隙間から暗闇を照らす。やはり人の気配はない。室内の調度品は人が住んでいるかのように整十中八九罠だ、分かってる。
その理解に如何して体は反するのか。
行かなきゃならない、守らなきゃいけない。振り向く顔は逆光で見えない。
「俺の代わりに」
広い背中が語る。
「彼女を、どうか頼んだ」
懐かしい声、光の中に遠くなる知らない後ろ姿。伸ばした指先が届く―――
触れたのは木造りの扉だった。先程の彼はもう見えない。迷いがないと言えばそれは嘘になる。俺は何も知らない、だからと言って逃げ出す気もない。
燻っていた情熱に、小さく炎が宿る。
ギシリ、鳴った扉を開いた。
い、積年の埃も全くと言っていいほどに無い。
まるで、時が止まっているようだ。
「いや、もしかして…」
実際止まっている?
この結界内では時が流れていないのか。それなら確かに汚れないのも納得がいく。
ということは、此処は深い森がもともと草原だったころからあったのだ。
色褪せぬ絨毯は毛が立っていて新品同様。蝋燭立ても全く使われていない。