ふと、気配を覚えた。刹那に抜刀、迎撃。
森で出会ったアレが、そこにいた。打ち合いの末、間合いを取る。影のように朧な体、しかしその手には、立派な剣が握られていた。
「お前…」
ここで、守り続けてたのか。時の流れないこの屋敷でずっと。刃を交えるだけで分かる。彼の執念が未だに体を動かしている。
「請け負った、どうか楽になってくれ」
彼の体は嘘のように軽い。突き崩して切りかかる。心臓の直上を切り裂いた。
砂のように崩れ、魔力の残滓すら残らなかった。
鞘に納めてふと、傍を見る。そこには先程までなかった長剣。鍔に填められた宝石が魔力と輝く。彼が持っていたものだと一目でわかる。
剣に近寄る。宝石には何か彫られていた。
「これ…うちの紋じゃねぇか」
三本薔薇に棘の茎。見慣れた紋章に思わず手を伸ばす。間違えは無い、これは―――
触れた途端、光が溢れた。
名も知らぬ彼に託された、名も知らぬ彼女。そして一振りの長剣。一体何を成せばいいか、正直分からない。その状況下でも一つ、分かることがある。