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小説 彼のための世界#41 |
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鯨 |
3/16 14:26 |
サンプルのいる病棟にEuclidは運び込まれていた。ベッドに横たわるEuclidの周りを回復魔道士が忙しなく歩き回っている。
「Euclidさん!」
カイトと莉央が駆け寄る。Euclidの体は血でまみれていた。
「Euclid!」
部屋に誰かが入ってきた。うちゃこんだ。
「お前、なんでこんなことに…」
うちゃこんが絞り出すように言う。この二人は知り合いなのだろうか。宮廷音楽家と騎士団長なら面識があってもおかしくはないが。
「襲撃だ…パーティーはほぼ全滅。フランが転移魔法を使って俺たちを逃がした…俺は町の近くに転移されたからよかったが…他の奴等は…わからない」
Euclidは苦しそうに言う。
「襲撃?誰から」
「わからない。魔物でないことは確かだが…」
「魔物じゃない?盗賊か?」
Euclidは答えないかわりに咳をした。血が混じっている。僕はそのやり取りをただ見ているだけだった。