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小説 彼のための世界#42 |
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鯨 |
3/16 18:42 |
病室を出て、僕たちはモモの部屋に集まった。
「まさか、Euclidさんと知り合いだったとはねぇ」
モモが言う。
「俺は宮廷音楽家だ。騎士団長と話せるくらい偉いんだからな」
うちゃこんは胸を張る。しかしその表情には陰りが見えた。恐らく二人は「知り合い」ではなく、それ以上の、いわゆる友人といった関係なのではないだろうか。
「でも、これで巨竜の件は難しくなったな」
カイトが呟く。
「だからといって研究所に行くわけにはいかないし…」
莉央も頭を悩ませる。
「研究所?」
うちゃこんが尋ねた。それに対しモモが説明する。聞き終えたうちゃこんは
「海月の黒歴史じゃねーか」
と笑った。
「だからその呼び方!」
モモは叱るが、
「でも海月ってかわいいですよね」
と莉央が言った。
「え?えへへ…そうかな?」
海月…モモはまんざらでもない様子だ。