|
|
小説 彼のための世界#45 |
|
鯨 |
3/28 22:42 |
(まずいっ)
反応が遅れ、うちゃこんは突き出される短剣を見ることしかできなかった。すると、その短剣の動きが右にずれた。
(ん?)
同時に何かが倒れる音がする。目を凝らすと女が床に伏していた。
「これだけ騒がれると、流石に起きる」
聞き馴染みのある声がした。
「Euclid!」
扉が開いており、部屋の中の光によって、友人の姿は照らされていた。
「痛っ!」
Euclidが肩を押さえる。彼の体には包帯が巻かれていた。
「無茶するなよ…」
うちゃこんはEuclidの体を支える。
「そんなことより、この女は何だ?」
Euclidが倒れている女を顎で示す。
「騎士団長様の熱烈なファンのようでございます」
「この度は俺のファンが迷惑をかけたな」
うちゃこんの冗談を聞き、Euclidは愉快そうに笑った。