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小説 彼のための世界#49 |
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鯨 |
4/4 22:33 |
「もしかしたら王は、こうなることがわかっていて俺に監視させたのかもな…」
男は誰に聞かせる訳でもなく言う。その視線は心なしか僕の方へ向いている気がした。
「おい、お前誰だ。そいつの知り合いか?」
うちゃこんが女を指差し尋ねる。
「さあな。友人かもしれないし恋人かもしれない。家族かもしれないし赤の他人かもしれない」
男ははぐらかすかのように言う。
「まぁ、貴様らにはどのみち関係無い。ここで消えてもらおう」
途端、大きな音がした。いつの間にか、僕の目の前にはEuclidが大鎌を構えて立っていた。
「え?」
僕は困惑する。何が起きたのか、男を見たらわかった。男は右手に銃を構えていた。銃口からは細く煙が出ている。恐らく先程の音は銃声で、それをEuclidが弾いたのだろう。
「逃げろ!」
Euclidが叫ぶ。僕は扉に手をかけ開けようとしたが、扉は動かない。
「無駄だ。結界を張ってある。ここからは出られないし、音も遮断される。なるべく静かに終わらせたいんでな」
男は再び発砲した。