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小説 彼のための世界#51 |
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鯨 |
4/6 22:35 |
Euclidは大きく鎌を振るう。すると全ての弾丸が弾かれ、部屋の壁にめり込んだ。
「お返しだ」
Euclidはそう言って、男に鎌の柄を突き出した。男はそれを避け、発砲する。しかしバランスを崩していたからか、銃弾はEuclidの顔を掠めるだけだった。途端、二人の攻防に気をとられていた僕の体が左へ引き寄せられる。
「え?…ってうわぁ!」
僕が今までいた場所には柿が短剣を突きたてていた。そして僕の背後には、うちゃこんが僕の襟をつかんで立っている。
「お前は隅にいろ」
うちゃこんが僕を部屋の隅に放り投げる。
「お前の相手はこの俺だ」
うちゃこんは拳を構えて柿をじっと見据える。まさか素手で闘うつもりだろうか。
「無茶よ、何やってんの」
モモが言う。部屋の隅にはモモとカイト、莉央がいた。
「どいつもこいつも、俺を舐めすぎなんだよ。黙って見とけ」
うちゃこんは言い放つと同時に柿に駆け寄った。