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小説 彼のための世界#53 |
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鯨 |
4/12 22:35 |
あぁ、熱い。俺、今どうなってる?そうか。撃たれたのか。ったく、あいつを庇ったのが馬鹿だったか。あのときもそうだ。フランやヲタクを守ろうとして俺が大怪我をした。しかも皆の安否もわからない。
俺は一体、何がしたかったんだ?
魔王を倒して世界を救う?騎士団長として、勇者としての責務を果たす?身を犠牲にして仲間を守れば満足か?馬鹿馬鹿しい。結局俺は、ただ流れに従って、惰性で動いてきたんだ。目標なんてない。
おい、うちゃこん。あんまり触るな。傷に響く。あの女はどうした。俺の心配よりそっちを優先しろ。
あー、視界が霞んできた。まずいな。もう、どうでもいいか。いや、こいつらを倒さなければ。俺にそんな力はあるのか?いや、奥の手がある。でもそれを使うと死ぬかもしれないぞ。もう…いいんだ。