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小説 彼のための世界#55 |
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鯨 |
4/24 22:41 |
Euclidが鎌を横に大きく振った。
「なっ!」
男が驚き、それを避けようとする。しかし、その姿は光によって見えなくなった。
「Euclidさん!」
僕はなぜか叫んでいた。カイトや莉央、モモ、そしてうちゃこんも僕と同じようにEuclidの名を呼んでいる。青白い光が部屋を覆いつくす。眩しさで何も見えない。やがて光は徐々に弱くなり、一人で立つEuclidの姿と、崩れた壁から覗く月が見えた。男と柿はいない。
「勝った…?」
あの二人を退けたのだろうか。
「倒したのか?」
カイトは呟く。
「おい、Euclid…?」
声がした方を見ると、うちゃこんがEuclidに近づいていた。
「なぁ、Euclid。おい、嘘だろ」
Euclidは返事をしない。
「悪い冗談はよせよ…返事をしろ!頼むから…」
もう二度と動くことのない体に、うちゃこんはすがりついた。