|
|
小説 彼のための世界#56 |
|
鯨 |
5/8 23:22 |
(なんなの…一体?)
めいは、森の中をさまよい歩いていた。
(転生?そんなこと…あるわけ…)
あの空間での、謎の青年の言葉を思い出す。
「嘘でしょ…」
思わず膝をついた。
彼女はこの世界に来て、混乱のあまり町を抜け出してしまった。あてもなく歩き続けた結果、森へとたどり着いたのだ。
「ここ…どこ?」
辺りは木々に覆われている。日は沈み、空には星が浮かんでいる。
「どうしよう、迷っちゃった…」
迷うも何も、めいには行くあてもない。それでも夜の森は十分に不気味だ。
(何?今の音…)
どこからか低い音がした。唸り声のようだ。すると目の前に黒い犬が現れた。異常なことに頭が二つある。
「いや…来ないで!」
めいは手で追い払おうとしたが、獲物を見据えた魔犬は容赦なくとびかかってきた。