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小説 彼のための世界#57 |
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鯨 |
5/18 17:54 |
ゴトゴトと音がする。それに合わせて体も揺れている。
(車の中…?)
めいはぼんやりと考えていたが、先程まで魔犬に襲われていたことを思いだし、急いで目を開け起き上がった。
そこは狭い空間だった。床も壁も木の板でできており、隅にはリュックのようなものや瓶などが置かれている。小さな窓があり、めいはそこから外を見る。夜の闇が広がっていた。
「あぁ、目が覚めたかい?」
背後から声をかけられ、めいは飛び上がるほど驚いた。そこには青年が立っていた。黒いローブを纏っており、腰には小瓶や硝子のような装飾をぶら下げている。さながら占い師のような風貌だった。
「おいおい、そんなに驚かないでくれたまえ。怪しい者ではないよ」
どこがだ。とめいは思うが口には出さない。
「えっと、どなたですか?」
「クロスとか、ヒューイとか、色々だね」
「は?」
「好きに呼んでって意味だよ」
変な青年と関わってしまったらしい。