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[ss]ヒット。(09) |
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入江 |
12/9 21:37 |
私が目を覚ましたそこは見知らぬ場所だった。ベッドに寝かされ、毛布が被せてある。天井や壁は木で出来ていて、木目が美しい。
私から見て左手にドア。右手には窓がある。窓の外には海が広がっている。
だが、落ち着いて眺めて見ると、実際の海ではなく、絵画だということに気がついた。
ベッドから起き上がり、覚束ない足どりでドアに向かう。ノブを回した、鍵は掛かっていなかった。
ここにも窓はあったが、やはり絵画が埋め込まれているだけだった。
この部屋には机や椅子等の家具や珈琲豆やポットが置いてある。
机の上には一冊の本が投げ出されていて、題名は...。分からない、難しい字だ。何語だろうか?
まじまじと本を眺めていると、隣の部屋から音楽が聴こえてきた。ゆったりしたピアノの曲だ。
私は何かに取り憑かれたようにノブに手を伸ばした。音が出ないよう、ゆっくりと開き、部屋の中を覗く。
グランドピアノが曲を奏で、金髪の女性が弾く。後ろ姿しか見えないが、まるで妖精がピアノを弾いているようだ。
音楽と妖精魅せられ、私は曲が終わるまで立ち尽くしていた。