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小説 彼のための世界#60 |
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鯨 |
6/5 23:23 |
「魔王?」
この青年は急に何を言い出すのだろう。めいにとって魔王など、物語でしか耳にしたことがない。
「あぁ。七十年くらい前、この世界に魔王が現れたんだ。そいつが魔物を生み出して、世界は大混乱。そんな世界を救いたいんだよ」
「…」
信じられない事ではあるが、そんなことがあってもおかしくはないのかもしれないと、めいは思い始めた。
「でも、なんで私も行くことになってるんですか?」
「君には素質がある」
「え?」
「君は訓練すればなかなか良い魔道士になれる。この僕が言うんだ、間違いない」
「この僕」をよく知らないため、めいは返事に困る。
「このあと、ある魔道士に会いに行くんだ。彼女に教えてもらうといい」
鯨は笑顔で言った。