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小説 彼のための世界#62 |
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鯨 |
6/21 23:22 |
「やぁ、元気かい?」
馬車の、前方にある小部屋から鯨が顔をだした。めいは返事をしない。元気なわけがないからだ。代わりに質問をする。
「私達だけで魔王討伐をするんですか?」
「お、乗り気になったかい?」
「断じてないです」
めいは即答する。魔王がどのようなものかはわからない。しかし、三人だけで倒せるような相手ではないことは確かだ。
「本当はもっと仲間がいたんだけどね。不測の事態があったんだ。おかげで、また新しい仲間を集めなきゃならない」
鯨は大袈裟に嘆く。
「ある程度目星はつけてるんだけどね。まぁ、実際に会ってみるに越したことはないさ」
どうやらこの旅は、仲間集めの旅でもあるようだ。
(だとすると私も「目星」をつけられてたってこと?)
めいは思う。どことなく不気味に感じた。
すると突然、
「うおおおおおぉぉぉ…!」
何かが吠える声がした。