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[連載小説]ヒット。(16) |
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入江 |
12/10 23:52 |
出発の準備が整い、いざ出発、というときにに呼び止められた。
「これは?」
リーナさんは小振りな拳銃を差し出している。
「ベレッタナノ。 携帯性に優れた拳銃だ。 使いやすいようにダットサイトをつけてある」
ホルスターに収まったナノを抜き、使い方を簡単に教えてもらった。しかし、自分が拳銃で人を撃つところは想像も出来ない。
拳銃を受け取ると、見た目よりもずっしりとしていて、重い。
「試しにあれ、撃ってみて?」
枝の上に空き缶が乗っていて、それを指で差し示している。
私は拳銃を構える。手先が震え、狙いが定まらない。
恐怖、怯え...。様々な感情が私の中で渦巻く。
ぶれるサイトを覗き込み、真ん中の点が空き缶と重なった時、引き金を引く。
空間に響く破裂音。痺れる両手。
「ッ__!」
結局、弾は空き缶をかすりもせず、木の幹を穿った。
リーナさんは『最初はそんなものだよ』と言って励ましてくれた。
私はホルスターを腰のベルトに付け、ナノを納める。パーカーで上手く隠れた。
「さ、行こう」