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[連載小説]ヒット。(19) |
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入江 |
12/12 21:52 |
その光はなんとも弱々しく、頼りがいのない光だったが、近づくにつれだんだんと大きくなり、それがなんなのかはっきりと分かった。
壁だ。巨大な鋼鉄の壁が路線から天井までを完全に覆っていた。光の正体は壁についた小さな照明のようだ。壁の迫力に圧倒されていると、壁の左端の覗き穴が開き、人間の目がギョロリと私達を睨んだ。
「誰だ?」
野太い男の声が私達に問う。答えたリーナさんは堂々としていて、その声は透き通っていた。
「カリストだ。 弾薬の交換と、ネピアの装甲板を売りにきた。 さっさと開けてくれ」
「あぁ、カリストか。 少し待て」
男は二つ返事で了承した。30秒ほどして、巨大な壁が、路線の上を滑るようにして開いた。ただし、人一人が通るのがやっとの隙間だ。おそらく、ブラークの襲撃を恐れているのだろう。
壁の内側に入ってすぐはまず検問所のようになっており、軽い持ち物のチェックが行われた。
「......」
リーナさんからのアイコンタクト。“銃は出すな”と言っている、気がする。
持ち物のチェックはあったが、ボディチェックはなかった。