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[連載小説]ヒット。(26) |
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入江 |
12/14 22:39 |
『必要な時に必要な事をするだけ』
リーナさんの言った言葉が脳裏に焼き付いて離れない。もし、リーナさんが殺すしかない、と思ったら殺すのだろうか...恐らくやるのだろう。リーナさんには躊躇がない。謂わばブレーキの壊れたエレベーター。落ちていくのは止められない。
「行くよ」
このメトロ·スラムは奥に行くほど人気がなく、いかにも治安の悪そうな雰囲気が漂っている。私達は迷路のようになっている“住宅路”や壁にあいている隙間を潜り、そして、メトロ·スラムの一番奥についた。しかし、そこには何もなくただ道が塞がれているだけだった。
「あの...?」
訝しげに訊くと、リーナさんは得意気に微笑んだ。
「秘密の店ってのはいつも隠れているもんだよ?」
リーナさんはそう言ってマンホールを三回ノックしてずらした。恐る恐るマンホールの中に入る。暗く、水の流れが響くそこは、何処か不気味だった。リーナさんが入ってきて、マンホールを閉めた。マンホールの隙間から漏れていた光さえも消えた。
「こっちだ」
胸のライトをつけて、また暗闇を歩く。