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【小説】なんでもないな#6 |
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由衣 |
2/16 14:5 |
うっ…。
ずっと二人の目が合ったまま、時間が流れて行く。
「えっと…!ごめんなさい!」
私は、その場を後にしようとした。
早く、家に帰らないと…。
焦って、ダッシュで家へ帰る。
雨が降り出した。慌てて傘をさす。傘をさしていてもびしょ濡れになる激しさだ。
あれ?
トントン トントン
誰かの足音がする。
トントン! 私の肩を、誰かが叩いた。
私は、振り向いた。
そこにいたのは、さっきぶつかった男子高校生だった。
「えっ……?」
その人は、こう言った。
「…大丈夫ですか」
私は、いきなりの言葉にびっくりした。
「えっと…!その…!」
さっきまで私は、涙を出していたのかもしれない…。
「…な、なんでもないです!」
その直後、相手の人は黙り込んだ。「…………っ」
かすかな、小さな声が聞こえた気がした。