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[連載小説]ヒット。(35) |
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入江 |
12/20 22:53 |
「にしても静かですね?」
メガネの隊員。ミカズキがひとりごちた。留守番は退屈な仕事だが、車を守るのは非常に重要だ。足がやられれば退路が無い。分隊の女性二人の一人、シライシが口を開いた。
「ミカズキはフェアリーの噂、どう思う?」
いつもは物静かで訓練が休みの日は読書などに没頭している彼女が、このての話に興味があるのは意外だった。
「そうですねぇ、一種の戦場伝説みたいなものじゃないですか? 北方領土にはロシア連邦軍のいずれも確認されていませんし、そもそもブラークが徘徊している土地、しかも単身で生きていけると思いますか?」
そう言うと、ミカズキは何かを思い出したのか、ポーチの中を探った。しかし、やはり入っていなかった。メガネクリーナーが無い。車内で使った時に落としたらしい。
「すみません、クリーナーを落としたみたいです! 取ってきますね」
スリングでハチキュウを背中に回して、後部ハッチに向かった。
__その時だった。
「ん”ぅ”っ…!?」