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[連載小説]ヒット。(38) |
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入江 |
12/21 20:40 |
あれから小一時間経過したが、なんの収穫も得られなかった。
「分隊長、どうも変です。 車に残った二人と連絡がとれません。 何度か呼び出しているのですが、応答がなくて…」
シラヌイの言葉に分隊長自ら呼び出しをかけたが、応答がない。通常ならば、有り得ないことだ。
「嫌な予感がするな…」
こういうときは敵の身になって考えるのだ。もし私がユジノ・クリリスクを防衛ラインとした防衛戦を想定して敵を待ち伏せし、確実な殲滅を狙うのだれば、まずは…。そうだ、足を狙う! つまり車を抑えるのだ。その仮説にたどり着いた分隊長は思わず舌打ちした。
『全員聞け、問題発生だ。車組との連絡がとれない。何者かに襲撃された可能性がある。直ちに捜索を打ち切り、車へ向かえ。途中で合流だ。仮想する敵はフェアリーとする。気をつけろ。相手はプロだ。絶対に一人での行動は避けろ。第2○2分隊の捜索は、一度北海道まで帰投した後、小隊規模で再開する。分隊のみでは危険かもしれん』
『行動開始』と、無線で呼び掛けたのを最後に、通信を切った。