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[連載小説]ヒット。(39) |
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入江 |
12/22 22:31 |
Bチームと合流して、車まで戻る道中だった。カンザキは自分の中に巣くう何かが危険信号を放つのを感じていた。しかも車に近づくにつれて大きくなっていく。
「止まれ」
入り組んだ幅の狭い道を進み、やっと大通りに出たときだった。分隊長が鋭くいい放ち、隊員等を手で制した。その先には私の乗ってきた車がある。だが、厄介なことに“余計なお荷物”付きだ。体にc-4(爆弾)を巻かれ、後ろ手に拘束されたシライシが木製のイスに座らせられている。タクティカルベスト等の装備類は全て外されていた。つまり丸腰。
「たす…けて」
両目に大粒の滴をためて、懇願する姿に、恍惚として、見入りたいものだが、何しろここは戦場だ。たっぷりと遊ぶ時間も無ければ、安全性すらない。敵味方関わらず、泣き喚いて命乞いをする姿は、気持ちを高揚させるものだ。まさに嗜好であり至高だ。しかしシライシも一応仲間なのだ。心配しておこう。
「散開っ、遮蔽物をと__」