「・・・・・・っ!!」
バトンが、目の前で落ちる。全てが、スローモーションに見えた。
砂埃が目に入り、視界がゴロゴロする。
このバトンを繋いで、走らなきゃなのに。前のライバルに、追いつかなきゃなのに。
体が、動かない。
思考が、働かない。
「マサ!!走れえええーーっ!!!」
「っ!!」
ユミの声で我に返る。転がっているバトンを握り締めると、右足に力を入れた。
ズキリと衝動が全身を駆ける。
顔を歪ませながら、必死に手と足を動かした。
相手はとっくにゴールしていた模様で、グラウンドの中央に倒れている。
一歩一歩、噛み締める。踏みしめる。
切れたはずのゴールテープが、復活していた。
『最後まで頑張って下さい!!』
アナウンスから激励を貰う。目からは涙が大量に落ちる。
後悔している時間なんて無いのに。
戸惑っている時間も無いのに。
『今、青団がゴールしました』
こんな自分に、これだけの仲間が付いてきてくれて。
――――なのに、俺は・・・・・・。