時計の針は、まだ左に指していた。
お祭りは丁度6時から。それまでものすごく時間が有り余る。
考えた末、夏休みの宿題を少しでも片付けたら、お祭りの準備をしようと絞った。
「ご馳走様。美味しかったよ」
一言母の背中に向かって声を投げる。
けれど、肩が揺れているだけで、振り向く様子がなかった。
神が階段を登ると、その音に反応するように、母親がそっと顔を上げた。
「うわ、なんもねぇ」
ドアを開けた先に広がったのは、すっかり片付けられた神の部屋だった。
しかしこれは片付けすぎなのでは。
けれど、母親のあの態度を見て、文句を言う気が失せてしまった。
ランドセルだけが仕舞われずに残っていた為、中から夏休みの宿題を取り出すと、勉強机に向かった。