|
|
[連載小説]ヒット。(#44.2) |
|
入江 |
1/4 22:37 |
だが、“マジックアルケミー”も万能ではない。欠点としては全体的に詠唱が難しく、大量の魔力を消費し、媒体が無ければ発動は不可能ということだ。そして、位が付けられないというのがネックだ。通常の魔力依存系術式の属性魔術は第一級から第十二級にまでの位付けができる。しかし、“マジックアルケミー”に上限は無い。謂わば使用者の想像力こそがものをいい、練度が高いほど強力になる。
そもそも“マジックアルケミー”は上級者向けなので過半数のウィザードが使えない。
前置きが長くなったが、要するに“マジックアルケミー”を使って、私達を括り付けている鉄柱からナイフを作りだし、拘束具を切断するということだ。幸いにも拘束具は樹脂製のフレックスカフだった。
「シライシ、ちょっと後ろ向いて」
「え?」
「早く…っ!」
背中合わせの状態になり、まずはシライシのフレックスカフを断ち切る。そのあと、私のも外してもらう。
「あともうちょい…っ」
あと少し、というところで足音にきずき手を止めた。階段を下りて、此方に来るというのが直ぐわかった。