えーと、誰かに親切をした、が972回。内、感謝されたが342回。おお!募金が1081回!素晴らしい!!16年間もの間、こんなに善美なことを行ってきた方を、私は初めて見ましたよ!!」
「…そりゃ、どーも」
「あなたはとてつもない’’良い人’’ですね!琴さん!」
名前知ってたんかい。
「別に」
「何がそんなに不服なのですか?
ふむふむ…ん?」
「俺は善人じゃない。犯罪者だ」
紙を捲る天使の手が止まった。
「ムムム…!」
「電車に轢かれたのも、サツから追われてたからだ。バチ。ただのバチに当たったんだ」
天使の睨む先。
《万引き履歴、1》
「万引きなんてちゃちな…」
「地味で悪かったな!!」
「……」
「どうでもよくなっちまったんだよ。募金活動らってる連中見る度に、意味分からん使命感に駆られ、訳もなく小っちゃい金を送る。ちまちまとな」
天使は黙って、空を仰ぐ琴を見つめた。