CHIBI QUEST 3

小説#4
mikazu☆

11/24 14:47

「オレ1人の力で、何が変わったんでってんだ」

独り言に近い抑揚で、琴は静かに嘆いた。
何を思ったのか、握り拳の力が増す。

「何が言いたいんです?」

天使は、相変わらずのトーンで琴に問う。
疎くなった琴は、叫んだ。

「だあから、俺は何回も金をくれてやったんだ!なのに…小せえ筆箱くらい…いいだろ別に」
「自己中ですね」

「知っとるわ。ボケ」

ぶった切る天使は、どこか哀愁が漂っていた。
そこがなんだか人間臭くて、琴の怒りは収束していく。
自分が死んだことによる開放感と肩の重荷が落ちた気がして、死後の不思議な雰囲気に半ば酔いしれるように、琴は溜息をつく。
「いやあ、どれだけ徳を積んでも、たった一度の愚行で全てがパー。理不尽ですね、人間の世界というものは」

何を言ってるのかこの天使は。
いくらなんでも、人間界と死後の世界が密接なのは誰だって察せる。
だが、こいつはとことん分からない。





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