『勿体無い』

クラゲはそう言った。

「は？なんだよ」

クラゲのくせに、人間様の生き様にケチつけるのか？

クラゲのくせに生意気な。大体君らはいいよな。すっとふわふわ出来て。

『私たちに当たらないでよ』

「本当のことだろ」

『そうだけど』

スッと認めやがった。なんだか罪悪感が出てきて、余計にイライラは増す。

『でもね、僕らも大変なんだよ』

森羅万象、すべての息をするものは、何かしらのストレスを感じるのは自然の摂理。逃れられない感情だ。

それは人付き合いを行い、個人個人、別々の思考を行う人間なら当たり前の劣情さ。

クラゲのくせに。

僕はふてぶてしく聞いた。

『きっと、君は分かってると思うよ』

「何をさ」

『明日だよ』

「明日？何？」

『明日が来るって、分かってると思うよ』

「んなん当たり前だよ」

『そう。当たり前。当たり前なんだよ』

イライラするのも、何もやる気が出ないのも、感情を出すことも

話すことも、笑うことも、泣くことも、走ることも、息をするのも

『僕らにとっては、そうだなぁ、ふわふわすることかな』

「餌を食べることは？？」

『当たり前なんて、思うもんか』

だって、僕たちはずっとふわふわしてるんだから。

『ふわふわしてるだけさ』

『人間とは、当たり前がチガウ』

『人間も、当たり前はそれぞれチガウんだろう？』

クラゲが、笑いながら言ったような気がした。

「…起きる」

『うん』

瞼が自然と閉じた。モヤモヤしていた眠気を包んで、体を包むようにして。

薄い景色は、いつものカーテンのシルエットが浮かんだ。

END