「中佐、やっぱ無理でした」
受けの体勢から、
構えの形に成った少女。
独り言のような台詞は、耳にある通信機に対してのものだと思われる。
「…はい。……はい。分かりました」
「……どうするむ〜みん」
ゴキラは戦闘態勢のまま。
その少女を警戒する。
「…ここに人員を割くのも、本望じゃない。
下へ。加勢を」
「了解」
じりじりと下がるゴキラ。
ここはビルの屋上。
真っ逆さまに落ちれば命は無い。
……たった1人で、
2人の相手を覚悟したみるは思った。
「じゃあ。死ぬなよ」
すとん、と落ちたゴキラ。
みるの息を飲む音が聞こえた。
「安心しろ。この程度で死なない」
む〜みんは、そっと少女を見据える。
黒い瞳に映るは、覚悟を決めた
先週そのものの眼差しだった。
「……名を聞こうか。紅の者よ」
「…っ、
私を倒したら、ね?」
両者、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。