「急げ。もうここも危ない」
「わかってるって。お、開いた」
梶が窓を開ける。外の空気が流れ込んだ。
「じゃ、お先」
梶は窓の端に手をかけ、体を持ち上げ外へ出た。青山も後へ続こうとする。すると突然、足を何者かに掴まれた。振り返ると、顔の焼けただれた、岸本晶が青山を睨んでいた。
「逃がさんぞ、殺し屋めええ!」
よく見ると岸本晶の頭に白い粉が付いていた。消火器を顔に噴射したのだろうか、その光景を想像した青山は思わず笑いそうになる。
「構っている暇はない」
青山は拳銃を構える。その瞬間、大きな音をたてて天井が落ちてきた。岸本晶はその下敷きになり、手を離す。体が半分外に出ていた青山はそのまま外へ転がり出た。梶がそれを見下ろす。
「逃げるぞ」
「あぁ」
二人は庭を通り抜けて道へ出た。真っ赤な炎が二人の背中を照らす。
(簡単には崩れないんじゃなかったのか)
青山は心の中で岸本晶を罵った。