「でもねアナタ、そんな堂々と昼寝用枕が消えました、って言うけど、そもそも学校に昼寝する為の枕持って来ちゃあ駄目ですからね?昼休みに昼寝するのは個人の自由ですけれども」
意外と寛容だ。
丁寧に諭されてようやく自分の犯した失態に気付き始めた俺だったが、少しほっとする。
反対側のソファに足を組んで座る彼は、器用に片眉を上げて笑った。
意気込んで扉を開けると部屋には意外にも一人だけしかいなくて、それが彼だった。
扉を開けて左側の壁は天井まである本棚で、ちょうど彼は本を戻している最中だった。
「どうも。ワタクシ、不肖生徒会長をやらせて頂いています。生憎、他の役員達は席を外しているのですが、ワタクシで良ければお話お伺いしましょう」
体育館のステージから全校生徒へ向けられるのと同じ笑顔、声音。
基本的に困っている市民(生徒)に対して温和な態度を取るのが生徒会長だ。
彼が魔王と成るのは、市民を護る為に最速の決断を下す時だけ。
もちろん、体験として実感したことなどないが。