「わっふーい!」
「うるさい。車が揺れる」
青山は運転席から、ベッドではしゃぐ梶を叱る。二人は現在キャンピングカーで、岸本晶の別荘に向かっていた。そこに岸本晶の妻と息子がいるという。青山の予想通り、その二人は岸本晶に逃がされていた。
「あくまで借り物だ。下手に壊しでもしたら鯨に怒られる」
キャンピングカーをレンタルしたのは一日前だった。鯨の店を出たあと、二人は計画を立て、荷物を準備した。意外と時間がかかったため出発したのは翌日の朝だったが、かなり順調に進んでいる。
「あの計画で大丈夫なのか?」
梶が不安そうに尋ねる。
「状況次第だ。臨機応変に対応する」
高速道路に入り、青山は加速する。目的地まであと二時間ほどだ。今のところ追っ手の姿は見えない。
「まだー?」
梶が子供のように言う。
「まだだ。高速降りたら山道に入る」
「お!青山が青い山に〜♪ってわけか」
「…下らない」