『…―とのことです。』
「お兄ちゃん…」
真乃は、心配気につぶやいた。
『警察は集団誘拐事件として捜査を進める方針を固めました。』
「大丈夫かな…」
母と同じような顔色で、窓から空を見上げる。
―プルルルルルッ―
電話の着信音だ。
「誰だろう…こんな時に…」
真乃は廊下の電話の所へ向かった。
「もしもし、真乃か?」
それは父の声だった。
「うん。」
真乃はうなずいた。
「真乃は無事だったのか…水樹は?」
少しほっとしたような声で問いかけてくる。
「ぱっ…パパ…お兄ちゃんが…帰ってこない…」
泣きかけの声で返すと、
「なっ…………!」
父は驚愕し、言葉を失った。
「……いっ…今すぐ帰る…だっ…だから待っていてくれ。」
父の声は震えていた。
「でっ…でも!!パパもあの円に吸い込まれるかもしれないよ!!」
真乃は心配気に言った。
でも返事はなかった。
―ブツッ―
通話は切断された。
「パパ…!!」