男は妻と娘が寝ている間に静かに家を出、十字路を曲がって行き止まりの方へあるいた。
その行き止まりの奥は二本の電柱と街灯に挟まれ、どこか別世界のような雰囲気をかもしだしていた。
「おい、いるか?」
男は奥の塀を叩きながら言った。
「待ってたぞい。早くお入り。」
そう老婆の声が聞こえると、男は塀の中へ消えていった。
そこは少し暗く、埃っぽい部屋だった。
男は老婆に言った。
「毎年すまないな、必ず『例のもの』は持ってくる。」
「わかっとるよ。お前さんが約束を破ったことなんてないじゃろ。」
老婆はそう言いながら男に大量の札束とメモが入った封筒、それに、大きな白い袋を渡した。
「あぁ、すまない。それでは。」
男は塀の部屋を出、ショッピングセンターやゲーム屋で、メモに書かれたものを次々と買っては白い袋に入れていった。
0:00、男はメモをたよりに何百件もの家の壁をすりぬけ、赤や緑、青色などのカラフルなプレゼントの箱を置いていった。
最後の一件を終えた時に男はため息混じりに言った。
「さぁ、ここからだ…」
2:00、男の本当の仕事が始まった。