五回コール音が鳴り、
『俺だ』
と男の声がした。
「その一言だけで自分のことがわかると思っているのか?」
青山は呆れながら言う。部下かなにかだと思っているのだろうか。
『その声…貴様!』
「気づいたか。元気か?院長」
『元気なわけがないだろう!お前のせいで…』
岸本晶は延々と火傷の具合や恨み言を言う。
(火傷は梶のせいだが…)
青山はちらと梶を見る。
『殺してやる!今どこにいる』
「言うわけがないだろ。しばらく逃げるよ。お前の息子と一緒に」
一瞬の沈黙の後、
『ど、どういうことだ。息子?の、登が…なんだって?』
と狼狽えた声がスマホから聞こえる。
「息子は誘拐した。まぁ俺達も鬼じゃない。すぐには殺さない。有効に使わせてもらおう」
『卑劣な手を!覚えて…』
「また電話する」
青山は電話を切る。そしてふと、
(登の声も聞かせた方が良かったかな)
と思った。