「条件とか言わなくてよかったのか?」
電話を終えた青山に梶は尋ねる。
「これから考える。この電話で岸本は下手に動けないはずだ。だからといって俺達も安全ではない。とりあえずここを離れる」
そう言って青山はハンドルを握る。
山道を下っている途中、急に梶が口を開いた。
「そういえばお前、あの噂は本当なのか?」
どうやら登に話しかけているようだ。
「なんのことですか?」
「薬を持ち出して同級生に…っていう話」
これは青山と梶が登のことを調べたときにわかったことで、登が病院から劇薬等を持ち出し、同級生に「試して」いるという噂があるのだ。死者も出たらしい。
登は静かに天井を見上げ、しばらく黙っていた。そして口を開いた。
「それは、悪いことなんでしょうか」
その顔に表情はなく、まるで別人のようだった。