「命は神様が与えてくれたもの。そして命の長短は神様が決めること。だから死ぬということはすでに決まっていて、原因が何であろうが、そこに善悪は無いんじゃないでしょうか」
登は一息に言う。
(あぁ、こいつは…)
苦手だ。と青山は思った。青山は生死に哲学や神を持ち込む人間が嫌いだった。
「そんな考え、親父さんに教わったのか?」
梶が哀れむような目をして登に尋ねる。
「いえ、これは…よく祖父が言っていたことなので」
「お前のじいちゃん何者だよ」
梶が半ば感心して言う。
「どう思う、青山」
「俺か?」
青山は少し考え、答える。
「俺は、神を信じないようにしている。こんな仕事を神が見たらすぐに地獄行きだ。だったら神はいない方がいい」
この言葉に登がどんな表情をしたのか、運転席からは見えなかった。