「岸本、来るかなー」
梶が窓の外を見ながら言った。
「あぁ。流石に息子を見捨てはしないだろう」
青山は登に目を向ける。
現在、キヤンピングカーが停まっているのは、かつて大型ショッピングモールが建っていたという跡地だった。ここで登を岸本晶に引き渡す予定だ。
「やっと…ですね」
登が緊張した面持ちで言う。
「昨日の電話は大変だったな、青山」
青山が岸本晶に電話したのは昨夜のことだった。一人で来る、という条件をなかなか引き受けてもらえず、口論になったのだ。結局、妻と二人で来るということになった。
(一応引き受けてもらったが、どうせ二人だけでは来ないだろう)
青山は信用していなかった。そのため昨日から、ある準備をしていた。
「おっ、あれか!」
梶が指を差す。その方向を見ると、黒い車が近づいてきていた。