「息子に何もしてないだろうな?」
岸本晶が尋ねる。
「あぁ。ご覧の通り、五体満足だ」
言いながら青山は、
(背後から押し倒したのはカウントされるのか?)
と考えた。
「早く、息子を…」
「条件がある」
青山が遮る。
「もう俺に関わらないでくれ」
「お、俺もな」
梶が急いで付け足す。
「その火傷や家のことは全て忘れてくれ。いいか?」
(まぁ、忘れられないだろうが)
岸本晶が押し黙る。そして
「わかった。条件を飲む」
と言った。
(嘘だ)
青山は思う。現に部下を連れてきているため、信用できない。梶もそう思ったのか、青山を見て肩をすくめた。ふと登を見た。その表情は、やっと終わる、解放されるといった安堵に満ちていた。