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[10]入江と言う女。2 |
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入江 |
4/24 21:42 |
入江「っ…」
頭をうった。軽い目眩がする。
少女「ここの研究員…?ま、いいや面倒だから、殺すね」
少女が私に馬乗りになり、ナイフを持った手を振り上げる。
私は大の字に寝転がったまま、抵抗する気力も、する資格もない。
少女がナイフを降り下ろす。
入江「…貴女、名前は?」
純粋に気になった。自分を殺す人の名前くらいは、知っておきたい、という勝手な願望だ。
ビクッ、と少女が震え、降り下ろした手が止まる。
少女「…ない、名無しの犯罪者だ、幼い頃親に捨てられた、今まで…生きる為なら何でもしてきた、盗みや殺しは日常茶飯事だった…」
悲しみの籠った声で、少女は語る。自分の生い立ちを、日々の苦しみを、親への憎しみを。
入江「入江、今から貴女の苗字は入江よ」
私はそっと少女の手を包み込み、言った。
少女「…は…?」
なにいってんの。と言う様な顔をして、私を見つめる。
入江「今度から貴女は入江、私の娘よ」
私は笑う。慈愛の笑みで。
こうして、のちの“入江提督”が生まれた。