青山は水戸グループに電話をかける。数回のコールの後、
『こちら、水戸グループです』
と若い女の声がした。
「社長と話がしたい。青山からって言えばわかると思う」
失礼します、と声がする。そして
『貴様、今どこにいる!』
と怒鳴り声が聞こえてきた。思わず電話から耳を離す。
「落ち着いてくれ。話があるんだが」
青山はなだめながら、岸本医院について説明する。
「…というわけで、悪いのは全部岸本だ。俺は雇われただけだから見逃してくれ」
『お前も同罪だ』
「このまま俺を追い続けるのと、人質をとられて為す術のない男を捕らえるの。どっちがいいかは流石にわかるだろう」
現に青山は一年間逃げている。
『…わかった。お前は逃げ足が速いからな。捕まりそうにない。だがこちらにも条件がある』
「条件?」
『お前をこの会社で雇う。生意気だがお前には腕がある。うちで可愛がってやろう』
(許す気ないな)
青山はため息をついた。