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[10]入江という女。4 |
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入江 |
5/3 19:24 |
入江「ただいま、母さん」
久しぶりの休暇。
母さん(あなた)の居ない実家。
油臭い家。
思い出したくない現実。
忘れたい過去。
誰しも一つはもっていて、自分以外の誰も持っていないも。
__それはあなただ、母さん。
燃え盛る家を見ながら私を包んだものは闇だ。喪失感と憎しみが混ざった、どす黒い闇。
私の頬を暖かい線が伝う。あの日以来、流さないと決めた涙が、自然と頬を伝い、地面へと落ちていく。
熱風が、私の涙を拭う。
私の消えた左腕が、虚しく空を切る。
ただいま、母さん。
そして__。
“さようなら”