忘却の花園。
私はあそこをそうよんでいた。半年前くらいに吹雪と行ったあの山の中にある開けた場所だ。
あそこには元々、家が建っていた。今では灰となり、風に舞ってどこかに行ってしまったけれど。海が綺麗に見える絶景ポイントだ。知っているのは私と吹雪、そして__母さん。
入江「あれから10年、か…」
冷たい左腕を触り、あの日無くした左腕の事を考えていた。幻肢痛(ファントムペイン)は未だに続いている。チタン合金の義手。人の温もりがない腕だ。私の腕が義手と知っているのは吹雪と明石くらいではないだろうか__。
この腕は私の誓いであり、報いなのだ。
深海淒艦によって奪われた幸せと、私の左腕__その復讐と母の実験により得た知識と超人的な身体能力に対する、報い、なのだ。
母の実験__その被験体になるのは私から望んだ事だ。そしてこの実験が、成功したことで、後の艦娘が誕生したのだ。しかし私はそのレアケースとなってしまった。__要するに艦娘を人間のまま、超えてしまったのだ。