山奥に青年はいた。一仕事終えた彼は、土で汚れた軍手を取る。
(やっぱり疲れるな)
今回の依頼は、ある高校生の殺害だった。どうやら依頼人の息子に大怪我を負わせたらしい。
(子を想う親の気持ち…ねぇ)
青年は親代わりだった祖父を思い浮かべる。祖父は青年に、神についてよく話していた。
(にしても神様は妙な運命を与えるな)
ターゲットである高校生は青年と、そっくりどころか生き写しだった。そのため死体を埋めた際は妙な気分がしたのだ。
背後に気配を感じた時には遅かった。気づいたときにはもう、地面に押し付けられていた。
「岸本晶の息子、岸本登か?」
青年を押し付けた男が尋ねる。青年は訳もわからぬまま、
「は…はい」
と答えてしまった。まさか人質にされるとは夢にも思わずに。