「…い。おーい」
声がする。目を開けると、さっき別れた彼女が、僕の顔をのぞきこんでいた。
(そうか、夢だったのか。フラれたのも、トラックにひかれたのも…ん?)
よく見ると真っ白な空間だ。それに気づいた途端、彼女の顔が揺らいだ。そしてそこには知らない青年の顔があった。
「目が覚めたかい?」
「うおぁ!」
僕は一気に後ろへ下がる。誰だこいつ。
「おいおい、怪物でも見たのかい?」
青年はおどけた調子で言う。
「あの…どちら様?」
「残念。俺は『どちら』じゃないんだ」
知ってますとも。初対面だけど。僕は思うが、口には出さない。
「まぁ俺に名前はないんだけどね。好きに呼んでよ。あ、でもなるべく格好いい名前が…」
困惑する僕をよそに青年は喋る。
「おっと喋りすぎたかな。では本題に入ろうか」
青年は「ここテストにでるよ〜」と言い出しそうな雰囲気で僕を見た。
「君には別の世界で新しい人生を送ってもらう」